問題の所在

緑のオーナー制度とは

 昭和50年当時、日本の林業は、財政的に厳しい状況下にありました。

 そこで、国は、昭和59年から「緑のオーナー制度」と称して、広く国民一般に出資を募り、約30年生の若年林の持分権を譲渡してオーナーになってもらい、約20〜30年後に成長した山林を競売して得られた収益金を配当するという仕組(分収育林制度)を立ち上げました。

 この「緑のオーナー制度」の申込者は国との間で、分収育林契約という契約を結びます。この分収育林契約は、対象となる樹木を国と申込者の共有とし、樹木 を販売したときに得られる収益を共有持分の割合で分ける(分収する)ことが主な内容となっています。ただ、国有林野に生育する樹木を共有とするため、細かく分けると、

◎ 国が費用負担者に対して当該樹木の持分を付与する契約

◎ 費用負担者が国に対してその持分相当分について育林を委託する契約

◎ 国が費用負担者について土地の使用収益を認める契約

の要素を含んだものとなります。

分収育林契約の問題点

 分収育林契約を結んだ「費用負担者」は、山元立木価格(注)が一定もしくは上昇すれば持分価格以上の「収益」を上げることが可能になりますが、山元立木価格が契約時点より下落した場合にはその程度によっては「収益」を上げることが出来ませんし、契約時に出資した資金の回収すら不可能となる場合もあります。

 ですから、費用負担者にとっ て「山元立木価格の動向」は非常に重要です。

 ところが、昭和55年以降現在に至るまで山元立木価格は一貫して下がり続けているのが実状です。

 このような状況について十分に知りつつ、国は、勧誘時には、

「2から3%程度の利回りが期待できる」

「おおむね100平米の木造2階建住宅に使用される木材に相当する立木を販売して得られる収入が見込まれる(一口50万円の場合)」

などと宣伝して、広く国民からの出資を募っていたのです。

 

(注)山元立木価格とは

 森林に生立している樹木(立木)の価格。一般には、原木市場から、伐採、搬出などに必要な経費を控除して計算され、利用材積1立法メートルあたりの価格(円/立米)で表される。

被害実態

 分収育林は、昭和59年から始まり、平成11年から満期を迎え始めました。

 しかしながら、上に書いたような状況ですから、当然、販売収益が費用負担者が負担した金額より少ない「元本割れ」のケースが相次いでいます。

 契約者は全国で86,000人、契約総額は500億円の規模にのぼると推計されます(2007年8月3日付朝日新聞)。

 国が主体となって行ったにも関わらず、あまりに杜撰な制度設計に、何度か報道でも取り上げられ、国会でも質問に上がるなど、大きな問題となっています。